『A』
Zeno ドーバッツァの取り調べも終わり、俺はアルバを家に送ろうと街を歩いていた。「疲れた」 アルバは苦笑する。そう思うのも無理は無い。質問責めにされ、何度か彼が望むような答えに誘導されかけたのだ。だが、さすがはアルバだ。都合の悪い問いはうまく…
Zeno ここは駐屯所の医務室のようだ。重い体を起こし、窓の外を眺める。太陽は高く昇り、辺りを明るく照らしていた。「おはようございます」 傍らには医者がいた。何があったと尋ねる前に、医者は口を開く。「ゼノンさん、あなたは一昨日ストレンの血液を浴…
Neal 市場はいつもよりも人が少なく、寂しい感じがした。多分、この前のストレンの事件の影響だろう。「ここに来るのも数日ぶりだなぁ。」 ふとアルバを見ると、彼女は黙り込んで何かを考えているようだった。「アールバっ」 彼女の肩を叩く。きゃっと可愛ら…
D 結局、夕べはあまり眠れなかった。下に降りるとアルバが朝食を作っていた。「おはよう、アルバ。」「おはよう。今日はずいぶんと早起きだな。」 ふと、アルバの手を見る。指はちゃんとある。「あ、指……」「まだそんなこと言ってるのか。」 アルバはいつも…
Neal 「おかえり。」 家に帰ると、アルバが迎えてくれた。「すまない、今日も帰って来ないと思って……。今からご飯作るから、待っててくれないか?」「ああ、悪いな。」 今日の夕飯はジャガイモのスープだった。「貧相なものですまない。今日はあまり買い物も…
Neal 茶色い髭を生やした騎士のオッサンに連れて行かれた先は、変わり果てた居住区だった。巨大なストレンがここに現れて、暴れていたそうだ。暴れていたストレンはどこへ行った、と、茶色い髭の騎士のオッサン……ドーバッツァ団長に訊ねると、そいつはもう死…
Alba「誰かいるか?」 次の朝。掃除をしていると鎧の男が訪ねてきた。この声はゼノンだ。「ゼノン、おはよう。悪いが今ここには私しかいないんだ。」「そうか、やはり……」 ゼノンはううむと唸る。兜で見えないが、間違いなく眉間の皺が増えているだろう。「…
Neal だいたいあの犬どもは片付けた。今、オレは逃げた犬のあとを追っている。しばらくおいかけっこを続けていると、洞窟にたどり着いた。「ここが奴らの巣か?」 後からついてきたゼノンたちは興味深そうに眺めている「これだけ広いと駆除も捕獲も大変だろ…
Alba ニール達の家から少し離れた住宅地。そこには大きな人がいた。……いや、「人っぽい何か」だ。黒く無機質な目に、砂を固めたようなザラザラ肌。ぼこぼこに膨れ上がった腕と脚で建物を潰している。これがストレンか……。 道は血や瓦礫や怪我人で埋め尽くさ…
D 「確かに『巣があるかも』とは言ったが、どこにあるかは全く分からないんだよね……。」 「全くってワケでもないぜ。」 ニールはこの町の地図を広げて、ペンで丸を書く。 「ここらへんでストレンがよく出没している。この周辺に巣がありそうだな。それっぽい…
Neal 「よお、アーカー。」 「いらっしゃい」 茶髪のひっつめ頭の女性は無愛想な返事をする。彼女はアーカー・マクベイン。この店『マクベイン』の店主で、昔から色々と世話を焼いてくれた人だ。 「その子は?新入りかい?」 「ちょっと違うかな……。アルバっ…
D いつものように起きて、下に降りる。今日はなんだか美味しそうな匂いがするな。そう思ってドアを開けると、アルバがいた。 「ディー、おはよう」 「アルバ!?怪我は大丈夫なの!?」 「だいぶ治った。心配するな。」 アルバは緑色の目を細めて笑う。長く…
Alba ディーは部屋から出ていった。私に紹介したい人がいるのだそうだ。着替えはベッドの横に置いてあるとディーは言っていたので、探してみるとそれらしい服をみつけた。 「……これか」 あの時私が着ていた服は駄目になってしまったのだろう。ここに置かれて…
……気がつくと、私は倒れていた。 「ねえ!キミ!大丈夫!?」 目を開けると、黄色が見えた。金髪に黄色の目の少年が、私の目の前にいた。 「あっ!起きた!」 腹が痛い。背中も。大きな傷ができているのだろう。全身にも、それほど大きくはないがたくさん傷…