ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 第2話 花の村と光の樹

Reg 
「ルギ、その腕輪は」 
 気になったので、聞いてみる。 ルギの右手にある腕輪。それは銀でできた重そうな腕輪だった。風のような紋章が入っていて、そこに緑の石がはめこまれている。 
「何だろう?売れば高そうだよな。いや、これで殴ってもいいかも…!」 
「大事に扱え。記憶を取り戻す手がかりになるかもしれないだろう。」
「はーい」
 ルギはやる気のない返事を返した。

「おお~、花畑だー!」 
「うっかり花を踏んだりするなよ」 
「分かってるって!」 
 ここはフロー村。別名『花の村』。 村全体が花畑で、珍しい植物も育てているということで有名だ。光の樹に行くための道は他にもあるが、ここから行くのが一番近い。 
 太陽がもうあんなところまで昇っている。人々の気配が動き始める。 もう、朝か。 
「なぁ、このまますぐに光の樹…だっけ?…に行くのか?」 
「そのつもりだが。」 
「いや、どっかで休んでいかないのかなーって。ちょっとオレ疲れたし」 
「駄目だ」 
「えぇー?」 
 そんな事をしている暇はない。一刻も早く光の樹へ行かなければ…。
「!?」 
 突然、俺達の目の前に大きな木が生える。 
「な、何だ!?」 
「おぉ~!!すっげー!」 
 感心している場合じゃないだろ! 
「ぅわぁあごめんなさいぃっ!!」 
 後ろから声が聞こえる。振り向くと、1人の少女がいた。
「本っっ当にごめんなさいっ!!」 
 黒髪を2つに結び、紅色の服と緑色のふんわりしたスカートを身につけた、焦げ茶色の瞳の少女。 この服は確かフロー村の民族衣装だったはずだ。
「これはお前がやったのか?」 
「う、うん。…その、昨日の夜起きたら…なんか、花とか木とか…とにかく、植物が生えるようになっちゃって…コントロールもうまくできないまま外に出ちゃって…!うー、どうしたらいいんだろ、これ。このままだと家にもいられないよ……。」
「何か心当たりは?最近変わった事は?」 
「心当たりは無いよ。変わった事?うーん……なんかね、今朝村長が誰かと話してたの。多分、隣町の人だと思う。 光の樹がどうとか話してた。」 
「光の樹?」 
 ちょうど俺が行こうとしていた所だ。
「すっごく深刻そうな顔をしてたよ。何かあったのかな?」 
「レグ?顔色が悪いぞ?」 
 早く行かなければ。俺はやや早歩きで進んだ。
「え、ちょっ、レグ?どこ行くんだ!?」 
「光の樹。急ごう。」 
「お、おう!」 
 光の樹に行こうとする俺達に、少女が言う。
「ねぇ!もし行くんだったらわたしも連れていってくれない?原因を知りたいの!」 
「分かった!」 
 と言ったのはルギ。 
「お前…。」 
「だってよー、人数多い方が楽しいじゃないか!え、駄目?」 
「…はぁ、分かったよ」 
 隣の町へ行くだけだ。そう問題はないだろう。 
「ありがとう!…あ、わたしはミクっていうの。よろしくね!」 
「オレはルギ!こっちの青い奴はレグって言うんだ!」 
 勝手に言いやがってと抗議している暇はない。俺は急いだ。

Miku
 フロー村の隣町、ギーバに着いた。光の樹はこの町の中心にある。
「こんなに近いのか!すぐ着いたぞ、すぐ!」 
 金髪の男の子……ルギはくるくる回ってはしゃいでいる。 
「そうだよね。わたし達、いつも近所の家に行くような感覚で来てるもの。」 
「騒がしいな」 
 青い髪、右が青、左が黒の目をした背の高い男の人……レグは呟く。 
「この町、いつも賑やかだからね。」 
「いや、違う。賑やかとか、そんなものではない。もっと別の…」 
 言われてみれば、ちょっとおかしい。なんか、ぴりぴりしてるような。 
「あっちで人が集まってるみたいだぜ!祭りでもあるのか?」 
「ほんとだ。人だかりができてる。」 
 祭りがあるなんて聞いてないけれど……。
「行ってみようぜ!」 

「………、」 
「お前、何をした!?」 
「……私、は……」 
「あたし、見たんだよ!前からあんたが光の樹に何かしているところ!!」 
「俺だって見たぞ!」 
「私も!」 
 何やら揉めているようだ。 騒ぎの中心には女の子がいて、人々はその人に色々言っているようだった。年はわたしより下くらいかな? 
 黒いフードを深く被っていて顔は半分くらいしか見えなかったけど、肌がものすごく白かった。全身黒い服装なので、さらにそれが目立って見える。 まるで陶器、いや、死人のよう?それくらいに白い。 
「光の樹?」 
 レグが呟く。みんな一斉にそれぞれ違う事を言っているからわたしには聞き取れないけど…レグには、聞こえたのかな? 
「どうした?」 
 レグはそのまま進んでそこにいる人に尋ねる。
「領主様!」
 彼は首の後ろを掻く。領主様、と聞こえたけれど……。
「あー……違う。俺だ。兄の方だ。久しぶりだな。」
「れ、レグ様!?」
 辺りがざわめく。レグはそのまま歩いて、鋭い目つきで中心にいた女の子を見た。
「で、何があった?その子は?」
 人混みの中にいた男の人がそれに答える。
「光の樹が炭みたいに真っ黒になったんです。しかもその上には黒い雲みたいなのがあって。そうなったのは夕べなんだが、同時にそこらへんの動物に変な力が宿ったり、植物なんかは動くようになったり、なんか色んな物が狂暴化したらしいんですよ。」 
「それで?」 
「原因は間違いなくコイツです。以前からコイツ、光の樹に何かしていたようでして。」
 男の人は女の子の腕を掴む。 
「い゙っ……」
 女の子は苦痛の声をもらす。
「やめてやれ。子供相手にする事じゃないだろう。」
 男の人はしぶしぶ手を離す。女の子は尻もちをついて、腕を押さえてビクビクと震えていた。
「おい、大丈夫か。」
 女の子は呻き声をあげる。その様子が普通ではないことはわたしでも分かる。レグはしゃがんで、女の子のフードの中を覗き込んだ。
「……!」
 レグは顔を青くする。
「誰か傷薬と包帯を持ってきてくれ。」
「くす、り?……くすり、やだ、やめて、やめてくださ、」
 女の子は酷く怯えている様子で首をぶんぶんと振る。
「仕方ないだろう、そんな怪我じゃ……」
「いや!いやぁぁ!」
 女の子は叫ぶ。一瞬、空気が冷たくなる。次の瞬間、女の子は姿を消していた。 

「あの子、どこ行ったんだろう?それに、光の樹が真っ黒になったなんて…。」 
 光の樹はギーバやフローでは「月の精霊が住む樹」と呼ばれ、シンボルとして大切にされている。秋には白く光る花を咲かせ、冬は青く光る石が根っこにたくさんついているという不思議な樹だ。
「……」
 レグは深刻な顔をして黙っている。
「どうしたの、レグ?」
「……あいつの顔、傷が……」
 レグは頭を横に振る。
「いや、それよりも光の樹に行かなければ。」
 レグは歩き出した。

 光の樹に着いた。予想以上に酷い光景に、わたしたちは言葉を失った。 その樹は影のように真っ黒になっていて、上には黒い雲のようなものがある。 周囲の森は枯れ、不気味な獣の声が響く。 
「…これは、」 
 レグは驚愕の表情を浮かべ、固まっていた。 
「…なんか、変な感じがするよな。 ちょっと息が苦しい…。」 
 言われてみれば。 その暗い空気に息がつまりそうな感じがする。ここには長くいない方がいいかもしれない。 
「ねぇ、一旦ここから離れようよ。」 
「…、」 
 レグはまだ固まったまま。 
「レグ?」 
 肩を揺さぶる。 
「…!ど、どうした?」 
「もう離れよう?ここには長くいない方がいいよ」 
「…そう、だな。」 
 来た道を引き返そうとすると……
「……?」
 レグは横を向く。いつの間にいたのだろうか、わたし達の前に何かがいた。狼だ。しかも数匹。 狼たちはわたし達に牙を剥く。今にも襲ってきそうだ。
 突然、空気が冷たくなる。…あれ?この感じ、さっきもしたような?
「あっ!」 
 狼達の方を見ると、時間が止まったみたいに固まっていた。 触ってみると、まるで氷のように冷たく固くなっていた。
 レグとルギは、私とは反対の方向を見ていた。 
「お前はさっきの…!」 
 そこには、あの時の女の子がいた。  
 女の子は返事もせず光の樹へと歩いていった。 そして、樹の前まで来ると…手を掲げた。 すると、樹が凍っていった。光の樹が凍っていくのと同時に、淀んだ空気が薄らいでいく。呼吸が楽だ。それに、あの黒い雲も薄くなっている。 
「…っ、」 
 彼女はふらふらしてて、今にも倒れそうだ。 
「あのっ!」 
 思いきって声をかけてみる。彼女はこっちを見た。だけど、すぐに倒れてしまった。 
「あ」 
 樹を覆っていた氷が溶け、崩れ、再び邪悪な空気が漂う。
 氷の欠片と水の雨を浴びながら、彼女は倒れていた。わたしは彼女に駆け寄った。

Reg 
 樹に付いた氷が崩れ、降り注ぐ。ミクは倒れた少女の方に駆け出した。途中で蔦が生えたが、すぐに枯れる。
「ガルルル……」 
 背後で、何かが唸る音が聞こえる。…さっきの狼だ。
「うわ、お前さっきの…」 
「俺がなんとかする」 
 俺は剣を構えた。
「いやオレも戦うよ!」 
 そう言ってルギは拳を構え……おいまさかその腕輪で殴るつもりか?
「お前は下がってろ。」 
 このくらいならむしろ一人の方がやりやすい。 
「えー…」 
 というやりとりをしているうちに、狼が飛びかかる。すかさず斬った。…残りはあと3匹か。 
「おお~!すげー!!よーしオレも…」 
「だからお前は出て来るな」 
「ハハッ、聞こえないね!」 
 ルギは右手をかざす。腕輪の石が、弱い光を放った。

Miku 
 レグ達がいる所の辺りから、とんでもない強風が通り過ぎるような、すごい音がした。いや、実際に風が吹いたんだ。 あの時の狼達が、そこにある枯れていた木が、吹き飛んで行く。
「……何あれ」 
 訳が分からない。狼だけでなく、木まで吹き飛ばされるなんて。どれだけ強い風なの。 
 レグとルギを見る。彼らは無事だったみたいだ。 
 さて、この女の子…どうしようか。 まずは上着のフードを取ってみた。 
 長く黒い髪。上着にしまっているようだけど、長すぎて上着の下から髪の毛が出ている。尻尾みたい。長いまつげに整った鼻、薄い唇。顔立ちはまるで人形のようだ。だけど、顔や体のあちこちに酷い傷がある。頬には真っ赤な痣。額は切れて膿んでしまっている。だからさっきレグは慌てていたのか……。
 とりあえず、連れて行かないと。わたしは彼女をおぶった。軽く、小さく、冷たい体。息はしているから生きてはいると思うけど……。

Reg 
「何だ、あれ……」 
 何が起きたか、分からなかった。気づいたら狼とそこにあった木が飛ばされていた。…強い風が吹いたのだろうか? 
「…す、すっげー!!なぁ見たか今の!!オレが腕をこうやってやるとさ、風がビューンって!!」
 ルギがさっきと同じように上に掲げると、風が吹く。さっきよりは弱かったが、ルギが風を吹かせたのは間違いなさそうだった。
 風が吹く直前、ルギの腕輪にはめ込まれた石が光った。腕輪のおかげか?この腕輪、一体何なんだ?気になる事はあるが、ひとまずここから離れよう。長居は無用だ。 
「レグ!」 
 ミクがこっちに来る。誰かを背負っているようだ。先程の少女だろう。軽々と背負ってはいるが、同じくらいの背丈の人間を背負うのはなかなか大変な事だ。俺なら子供1人楽に抱えられるだろう、と俺はミクに代わって少女を抱きかかえた。あの時にも思ったが、肌がとんでもなく白い。その白さが惨たらしい傷痕をさらに強調してしまっている。
 とにかくここから離れようぜとルギは言う。ミクは頷いた。俺達は来た道を引き返した。