ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 第8話 笑う兄弟

Reg
 それから一晩経って。俺はベッドの上で眠る男を見ていた。あのローディンとかいう男に囚われていた我が弟、ロンドだ。
「……う、ん?」
 彼はゆっくりと目を開ける。
「起きたか」
 俺が声をかけると、彼は目を見開いた。
「レグ?……本物だよね?」
「お前とそっくりな色男が他にいるわけないだろ?」
 ふざけたように俺は口の端をつりあげる。ロンドはぷっと吹き出した。
「はは、そうだったね。……ごめん。僕、ギルガ家の当主なのにさ。こんな問題も1人で解決できないで……。」
「気にするな。俺もあのローディンとかいう奴を取り逃した。失敗したのはお互い様だろ。」
 あの後、俺とルギで屋敷中を捜したがあの男はどこにもいなかった。
「そうか、ローディンは逃げちゃったのか。」
「……何があった」
 俺が尋ねると、彼はしばし黙った後少しずつ話し始めた。
「信じられないとは思うけど、今から話すのは本当の事だからね。君がいない間、ローディンがここに使用人として来たんだ。その時からかな、他の使用人達が『怖い夢を見る』、『幽霊が出るようになった』、『正体不明の化け物に襲われた』って言うようになって。次々と使用人達が辞めていって、最後に残ったのは僕とローディンだけ。僕は彼に捕えられ、このザマさ。あいつ、夢とか幻とか……そういうのを操る魔法が使えて。簡単に言うと、ずっと悪夢を見せられ続けていたんだ。」
 魔法。普通の人間には扱えない力。トイフェル族やニュンフェ族と呼ばれる人種がそれを扱えると聞いたが……。
「彼は、自分はトイフェル族だと言っていたよ。」
「そうか」
 ロンドは悔しそうに唇を噛む。
「彼の事は信頼してたんだけどね。誰よりも仕事は出来るし、料理はおいしいし、頭もきれるし。割と立ち入った話もできる仲だったんだよ?だけど……だけどなぁ……」
 ロンドは人を見る目には長けていた。彼も自信を持っていただけに、今回の事は堪えたことだろう。
「……あの薄笑い野郎がどれほど有能だろうと狡猾だろうと知ったこっちゃない。それよりも、やる事があるだろ。」
「やる事?」
「あいつがここを乗っ取ろうとした理由を突き止める必要がある。盗まれた物は無かったか。怪しい痕跡は無いか。見たところこの家は綺麗に保たれていたようだが、どこがどう変わっているか分からないからな。それに、お前が捕えられていた間、よそでは何が起こっていたか知る必要がある。悔やむのはその後だ。……一段落ついたら愚痴でも何でもいくらでも聞いてやるさ。」
 何も知らない俺が言えるのはここまでだ。ロンドを見ると、彼も俺を見つめ返していた。
「ああ、その通りだ。……君のその様子を見ると、外でも何か起こってるんだろう?ギーバの領主として、解決しないとね。」
「俺も手伝う。召使いとでも思ってこき使ってくれよ。」
「元からそのつもりだよ?」
 まったく変わらないな、と思わず顔が緩む。それを見てロンドもぷっと吹き出した。
「君、ますます笑顔が変になってるよね!」
「へん……くく、変とは何だ、失礼だな!」
「だって変なんだもん!1人で山ごもりしてたからかな!」
「違いない!」
 2人で声をあげて笑う。腹が痛くなるほど笑っていたら、ロンドに名前を呼ばれた。
「ねぇ、レグ。」
 なんだ、と返事をする。
「おかえりなさい」
 彼は本日1番の笑顔を見せる。それなら俺はこう返そう。俺はぎこちない笑みを浮かべた。
「ただいま」