ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 16話 燃え始める事件

Reg
「………」
テノールは立ち止まる。フードを深く被り、下を向きながら。その様子は、顔を誰にも見せない為の仕草のようにも見えた。
「どうしたんだテノール?そんなに深く被ったら前が見えないだろ」
フードを彼女の顔が確認できる程度に上げる。…顔色が悪い。白を通り越して真っ青だ。
「大丈夫?顔色が悪いよ…?」
ミクが聞いてもテノールは黙ったままだ。その顔には怯えの表情が出ていた。
「…ここにはいたくないのか?」
テノールはこくんと頷く。
「だから…、外で待ってる、から…」
……心配だ。
「俺もついていく。師匠、ルギ達をお願いします」

Miku
「大丈夫かな、テノール…」
心配。
「大丈夫だろ、レグがいるしな。しかしまー…あいつも男になったんだなぁ。」
ゾリアスはそう言ってるけど…。
「…それにしても。ここを嫌がるなんて…あいつ、トイフェル族か?ここはニュンフェ族の…なんだっけか。忘れちまったが…とにかく、そいつを神とし、その力を借りる場だ。ニュンフェ族は精霊族とも呼ばれる。よくトイフェルと対立しているな。読んだ事ないか?『ようせいとあくま』っていう童話。」
それは読んだ事がある。悪さばかりしている悪魔を妖精達が皆で協力して退治する話だったよね。知らない人の方が少ないんじゃないかなぁ?
「とにかく、ここを嫌うのはトイフェル族ぐらいだろうよ。」

Reg
俺とテノールは修道院から少し離れた場所にいた。
「…大丈夫か?どこかで休むか?」
「………大丈夫。少し、怖くなっただけだから」
怖くなった…あの修道院が…。やはり、こいつは…
「…なぁテノール。お前もしかして…………トイフェル族なのか?」
「…………」
テノールは少し黙った後…
「…そう」
頷いた。
…やっぱりな。魔力を持つ、ニュンフェの修道院を嫌う少女。きっと悪魔族だろうと思ったのだ。
「…嫌いに、なった?」
「何故だ?」
「トイフェル族、だから」
「……あのな。俺にとってはそんなのはどうでもいい事だ。ルフェーリアンじゃあるまいし」
俺はそう言いながら、昨日のテノールとの会話を思い出していた。『レグ達を不幸にする』…。テノールはそう言っていたな。周りを不幸にする…災いをもたらすトイフェル族…。
……まさか、な。

Rugi
「…どうぞ」
シスターに案内され、応接室に入った。シスターはテノールよりちょっと明るい感じの赤い目で、目の辺りに火傷があって、少しやつれていた。…やっぱどこかで見た事あるんだよなぁ。
「…それで、えぇと…ここに火を付けられる、とは」
「…友達が、あの放火騒ぎの犯人と思われる人物から聞いたらしいんです。ここに火を付けるって。何て名前だったっけ…」
「ジョニーだった気がするぜ!」
「おぅよ!ジョニーだと思うぜ!なんか違う気がするけど多分そうだろ!」
「絶好違うよ!誰なのその人!」
「そう、なんですか…。大丈夫ですよ。ここには水の精霊術士もいます。火を付けられてもすぐに消せますよ」
『精霊術』。その言葉がぐるぐると頭の中を回る。頭の中に文字…いや、本のページが浮かび上がる。ページには真っ黒なぐらい文字がぎっしりと詰まっていた。
「精霊術って?」
「精霊術というのは…」「精霊術とは、」
「えっ?」
「精霊や自然の力を借り、それを魔術として扱う術である。精霊術は『呪文』と呼ばれる合図を精霊へ送り力を借りるもの、精霊や自然の力または魔力の籠った杖や装飾品などを身に付けその力で魔法を発動させるものの2種類があり、…」
まるで本でも読むかのように、すらすらとオレの口から言葉が出る。
「…あ、あれ?オレ、こんなの知ってたっけ?」
「えっ?」
「なんか、精霊術って聞いた時に…頭の中に文字みたいに浮かび上がって…………本、だった。そうだ、本に書いてあって…頭が痛くなるくらい文字がぎっしりな…でもオレ、必死になって読んで…覚えようとして…何の本だっけ…?…っあーもう分かんねー!」
「おいおい落ち着けよ。ごちゃごちゃしたモンを無理に思い出そうとしたら余計分からなくなるぞ。こういうのはな、時間をかけてゆっくり整理すりゃいーんだよ」
…そっか。そうだよな!
「ありがとな!ゾリアスのおっさん!」
「おうよ!」
「…それで、ご用件はそれだけでしょうか?」
シスターは怖くなるくらいの笑みでこちらを見ている。
「あ…そ、それだけです。えっと、気を付けて下さい」
「はい。皆様もお気を付けて……」

Miku
「わわ、もうこんなに暗くなってる」
辺りを見ると、空は藍色に染まっていた。
「もうそろそろ王様に報告した方がいいかな」
「あ、そっか。レグ言ってたもんな」
「もうそろそろあいつも城に行ってるんじゃないか?」
じゃあ行こうぜ、とルギが言う。
「それにしても…あのシスター、新入りか?」
「…え?」
ゾリアスは何かを考えるように頭を掻く。
「…あーいや、見た事ない顔だと思ってな…。ワシ、祭具や杖なんかも作って売ってんだ。それでよくあの教会へ売りに行くし、あそこの人達のほとんどが顔見知りなんだが…あんなやつ、いなかったぞ。…ワシが忘れてるだけかもしれないがな。青い目のシスターなんて他にもいるし。」
「…えっ、青…?な、なぁ、あのシスターの目、青かったっけ…?」
ルギの表情が不安へと変わる。
「なーに言ってんだよ。青に決まってるじゃねーか。」
「…赤くなかった…のか!?」
何を言っているのだろう。あのシスターの目は綺麗な青色だ。わたしでも分かる。
「赤くなかったよ。」
わたしがそう言うと、ルギはさっと顔を青くする。
「…ま、まさか…!」
ルギはばっと振り返り、教会の方向へ駆け出した。

Reg
俺達は調査を続けていた。だが、新しい情報を得る事は出来なかった。
「…収穫ゼロ、か」
はぁっと溜め息を吐く。俺はちらりとテノールを見た。森を抜け、休む間もなく町中を歩き回り調査したのだ。疲れない筈がない。それがか弱い少女なら尚更だ。
「…少し休むか?」「大丈夫」
即答である。
「そうか。…疲れたらちゃんと言えよ?」
テノールは頷く。
…辺りはもう暗くなっている。そろそろ王様に報告しに行こうか…そう思っていた時だった。
ぼんっ、と何かが爆ぜるような音がする。何回も、何回も。そして…
…目の前に赤色の炎が広がった。
「何だ、これは…!?」
辺りを見回しても、赤、赤、赤。凄まじい程の熱気。火事というレベルではない。…火の海だ。これもヘラーノとかいう奴の仕業なのだろうか?
「はーっはっはっはァ!」
誰かの笑い声が木霊する。そして…火の中から、1人の男が姿を現した。赤髪が混じった黒髪。金色の瞳。…腕には鎖が巻きついている。
「会いたかったぜぇ。さっきは悪かったなぁ、どうやら人違いだったみてぇだ。あんな奴と同姓同名の人って本当にいるんだなぁ。…ま、ただの偶然ってワケじゃねぇみたいだが」
まさかこいつがヘラーノか?…だとしたら危険だ。俺は腰から剣を抜き、構えた。
「ちょーっと予定変更でなぁ。教会だけ燃やすのはつまんねぇからよぉ。どうせ最後だし派手にやるかー!って事で他の建物も燃やしてみたんだぁ。」
気が効いてるだろ?とでも言うかのような顔。
「燃え盛る建物、逃げ惑う人々…あっはっはっは!!絵になるねぇ!ザマーミロって感じだぁ!ぜひともアイツに1枚描いて貰いたいもんだ!な?てめぇもそう思うだろぉ?」
「……」
テノールはいつの間にかナイフを手に握っていた。…このナイフ、氷で出来ているようだ。熱気で少し溶けている。
「…なぁ、お嬢さん?オレ達に協力しねぇかぁ?」
唐突すぎる提案。何を言ってるんだ、こいつ…!
「オレ達はみーんな仲間だぁ。お前と同じ、トイフェル族なんだぜぇ?」
「…!どうして…」
何故彼女がトイフェル族だと知っているんだ?
「そんなビックリすんなよぉ、照れるじゃねぇか。…ま、うちには変装、調査はお手のものな奴がいるからなぁ。てめぇの素性を調べる事ぐらい簡単に出来るんだよぉ。てめぇが何者か、どこ出身か…何をしたかも全部分かってんだ。…それでもオレ達はてめぇを受け入れるつもりだぜぇ?さ、どーする?」
テノールは返事もせず、ヘラーノに飛びかかった。…すると、ヘラーノの腕に巻きついていた鎖は蛇のように伸び、テノールの身体を捕らえた。
「ノーの代わりに攻撃か。そんなにオレが嫌いかよぉ、悲しいぜぇ…。そんなら、オレはてめぇの事を愛してやるよ。てめぇが喜んでイェスと言うまでなぁ」
「…っ、あ」
ヘラーノは鎖を解き、テノールを抱き寄せる。
「くはっ、抵抗しないとは…いい子ちゃんだ。…いや、出来ないのか。こうされたら怖くて怖くて動けなくなっちゃうもんなぁ?大丈夫だぜぇ、あいつらみたいな事はしないからよぉ。いーっぱい愛して…」
…このままではテノールが危ない。俺は素早くヘラーノに近寄り、テノールに当てないように気を付けながら剣を降り下ろす。
「うぉっ!?あっぶねぇ!」
ヘラーノはテノールを離した。そのまま俺はヘラーノの首筋に剣をつきつける。
「動くな」
「…チッ、野郎はお呼びじゃねぇんだよ」
あーつまんねぇ、とヘラーノは伸びをする。
「動くなと言った筈だぞ」
「んなもん誰が聞くかよ。刺したきゃ刺せよ。刺せるもんならなぁ」
その瞬間、ヘラーノの体が燃え…一瞬で消えてしまった。
…逃げられた。悔しさが込み上げてくる。その悔しさをどうすればいいか分からなくて、俺は地面を殴った。
「…レグ、ごめんなさい」
テノールの声ではっと我に返る。
「い、いや。テノールが無事なら何よりだ。これからは敵に突っ込むのはやめろよ?」
「…うん。
……ヘラーノ、他の場所も燃やしたって、言ってた。火、消せるかな」
テノールはぶつぶつと呟き…両手を掲げた。