ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 23話 少女の苦しみ

Reg
ルギとミクの寝息が聞こえる。もう眠ってしまったようだ。
テノールも寝ろ。疲れただろ?」
返事はない。
テノール?」
「!」
テノールは驚いた顔をしてこっちを見た。そして俺から目を逸らし、口を開いた。
「…この前、『どうして私に優しくするのか』って、レグに、訊いた」
夕方の森での事か。
「レグは、『ただ助けたいから』って、言った。…レグは、優しい。悪者の私を、守ってくれる」
「それは違う。お前は悪者なんかじゃない。」
「違う。私は悪者。クズでバケモノでヒトゴロシでゴミなの。」
テノールらしくない荒っぽい言葉。
テノール?どうしたんだよ?お前らしくないぞ、そんな荒っぽい言葉…」
「あらっぽい…?…私、牢獄の中で、他の人の会話や命令を聞いて、言葉、覚えた。だから、変なところ、あるかもしれない」
「…あぁ、そういうことか。」
ん?待てよ、だとしたらテノールは一体いつから牢獄にいたんだ?生まれた時から?
「なぁテノール、お前、牢獄に来る前はどうしていたんだ?」
「…どこかの、家にいた。いつからなのか、何でなのかはよく分からないけど、暗い部屋に入れられて、誰の姿も見ないでくらしてた。」
「誰の姿も見ずにって…、飯とかはどうしてたんだ?」
「そんなの、食べた事なかった。口に入れた事があるのは、薬だけ。ずっとお腹が痛くて、気持ち悪くて…ルフェーリアから逃げてきて、森の中でリンゴを…初めて食べ物を食べた時、それが『お腹が空いてる』ってことだって分かった」
ルフェーリアから逃げて…って、最近の事じゃないか!?飢え死にしてもおかしくない…というか、飢え死にしなければおかしい。まさか彼女は不死身なのか…?
「…カルリエッタの牢獄では、囚人たちは、みんな、助け合ってた。怪我をしたら、誰かが自分の服を破って手当てして、お腹が空いてる人がいれば、みんな、自分の食料を分け与えていた。
だけど、私だけは違った。囚人も、看守様も、みんな、私のこと、殴って、蹴って…」
テノールは上着を脱ぎ、袖を捲る。…痕だらけの細い腕。傷痕、火傷の痕…そして、刻まれた「15」の文字。全て、囚人や看守らによるものだというのか?
「…しょうがない、ことなの。私は看守様に命令されて、ずっとそれに従ってきた。囚人を殺して、傷付けて…。だから、責められるのは、当たり前。…でも、私は、怖かった。悪いのは、私なのに。」
「…」
「私は、使える道具でないといけなかった。殴られるのも、蹴られるのも、もう耐えられなかったから。…私は、その為だけに、たくさんの人を殺し、て、……
…ごめんなさい。変な話、した。」
テノールは立ち上がり、どこかへ歩こうとする。
「…テノール。もっと俺達の事、頼っていいんだからな。仲間なんだから。」
テノールはぎゅっと自分の服の裾を握り、俺から離れた。

Tenore
何も感じない体が欲しい。痛みも苦しみも感じなくなれば、何も怖くなくなる。どんなに殴られても、耐えることができる。もう自分の為に誰かを殺すこともない。
『もっと俺達の事、頼っていいんだからな。仲間なんだから。』
仲間って、何?分からないよ。頼る?どうして?私にはそんな事、できない。たくさんの人を殺して、傷つけて…そんな私に、誰かに頼る事なんて許されるのか?許されるはずがない。…私が全部耐えればいいんだ。そうすれば、誰も傷つかない。誰にも迷惑かけない。だから、だから…!
「もう、許して」
誰にも聞こえないように、小さく呟いた。