ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 第53話 名前

Reg
「ローディン・ベルフィスはペンネーム。本名は……テノール・リーディット。」
 それを言った瞬間、周囲が静まる。
「……ははははっ!」
 沈黙を破ったのは、ローディンの笑い声だった。
「私の本名はテノール・リーディット……ええ、その通りですとも。……貴方と同じ、ね。」
 ローディンの目はテノールに向いている。テノールは茫然としている。
「……」
 彼女にどう声をかけていいのか分からない。「その名前はお前のものじゃない」?違う。……ああ、わからない。
「貴方は私の名前を使っていたのです。」
 ローディンははっきりと言い放つ。
「『テノール・リーディット』を名乗っていたこと。それが、貴方がテレジアと面識があったと考えた根拠でした。そして、貴方が看守と同じように囚人を殺していたと知り……貴方も同罪だと考えていたのです。」
「何言ってんだよ!テノールはあいつらに命令されてたんだ!だってそうしなきゃ……」
「いいの」
 ルギは叫ぶ。テノールが止める。元々白い顔だが、いつもより顔色が悪いように見える。
「もう、いいの。」
 それだけ言って、テノールはローディンの手を取る。
「私も同罪。間違いない。……私がローディンの名前を借りてたのなら、返す。もう2度と名前で呼ばれなくても、また番号で呼ばれるようになっても、それで……、……。」
「それでいい、とは言えないのでしょう?」
「……言えない……けど、でも、大事な、誰かに貰った名前なんでしょ。ローディンが……テノールが、愛されてたっていう証拠でしょ。そんな大事な名前、私が使ってていいわけない。」
 テノールは泣きそうな顔で言う。ローディンは手をテノールの肩に置く。
「あれが大事な名前だと本当にそう思うのならば、今までどおり貴方が使いなさい。……カルリエッタのゴミ捨て場であの子の首を見つけた時から、いや、もっと前……私達の家に火を付けられたあの日から、私はテノール・リーディットの名を捨てたのです。捨てたものをどうして返せと言うのでしょうか?……これは貴方を疑ったことへのお詫びでもあります。どうぞ、これからもテノール・リーディットを名乗ってくださいませ。……くっ」
 一瞬、ローディンは顔をしかめた。傷が痛むのだろう。
「ローディン、大丈夫か?」
「ええ。心配いりません。……ははは!やはりその名前で呼ばれるのが1番しっくりきますねぇ。」
 ローディンは大声で笑い飛ばす、が、よく見ると額には汗が滲んでいる。ミクもそれを見逃さなかったようだ。俺にそっと耳打ちする。
「ねえレグ、一旦戻ろう?まだ調査は出来てないけど、ローディンをちゃんとした所で休ませなきゃ……。」
「……そうだな。ローディン、歩けるか?肩ぐらいなら貸すぞ」
「大丈夫です。……メディエに行くのですか?」
 メディエ……メディステールの城下町。あそこにはレージェもいるし、彼を休ませる事ぐらいは可能だろう。
「あそこでは私は犯罪者扱いされているのでは?……まあ、牢屋にぶちこまれても仕方がないことをしましたからねぇ。」
 ニュンレリズ教会を燃やすのに加担し、ロンドとその使用人に危害を加えた。確かに罪に問われてもおかしくない。
「大丈夫だ。あいつは負傷してる奴にそんなことするような奴じゃない。傷が治った後は分からんがな。」
「別に私自身は何をされたっていいのですよ。それくらいされても仕方のないことをしましたから。ただ、ヘラーノだけは……」
「ヘラーノ?」
「……いえ、何でもありません。」
 そういえば。レージェが言っていたな。ヘラーノはローディンの義理の弟だ、と。彼らの間には俺達が思っている以上の強い絆があるのだろう。
「行きましょう。」
 ローディンは立ち上がる。足の怪我のせいで上手く立てないようだ。
「無理しないで。怪我が悪化したら……」
 ミクは手を差し出す。ローディンはそれを見ようともせず、1人で立ち上がった。