ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 第62話 メディス城にて

Miku
「……」
 テノールもローディンも、暗い顔をしている。こんな時こそわたしがしっかりしなきゃ。
テノール、ローディン。お茶かコーヒーはいかが?」
「いらない」
「結構です」
 すぐに断られた。ちょっと悲しい。
「……」
 ローディンは不安げに窓を見ている。
 レグたちがここを出ていった後、街ではとある異変が起こった。街中のトイフェル族の人達が暴れ出したのだ。
「なんでこんなことになっちゃったんだろうね」
「……メリーサ嬢が操っているのでしょう。彼女にとってトイフェル族は使い魔や奴隷のような存在ですから。……目的は、ここの警備を弱くすることでしょうか?」
 それを聞いて、背筋がぞくりとした。メリーサはそんなことまでできるのか。
「ローディンとテノールは大丈夫?どこかおかしかったりしない?」
 テノールもローディンもトイフェル族だ。街にいる人達みたいに暴れる可能性だってある。
「今のところは大丈夫です。」
 ローディンは微笑む。テノールも頷く。
「何かあったらすぐに言うのよ。分かった?」
 ローディンは頷くと、再び窓に視線を戻した。
 トイフェル族はみんな、赤い髪か黒い髪なのだそうだ。確かに、街で暴れているのは皆、赤い髪か黒い髪の人ばかりだ。金髪や茶髪の人は街にはほとんどいない。家にこもってるのか、それとも……。
「そういえば、ローディンってトイフェルなのに金髪よね?トイフェルだけど赤い髪でも黒い髪でもない人ってやっぱりいるのかな?」
 そう。ローディンはトイフェルであるにも関わらず、その髪は蜂蜜のような金色をしている。金髪はニュンフェの特徴って聞いたことがあるけど……。
「さあ?私以外でそういう人は見たことがありませんからねぇ。」
 ローディンは窓から目を離さずに言う。
「……まずいですね」
 暴れているトイフェルたちの半分くらいが城に向かっている。今は兵士の人たちが止めてくれているけど、少しずつトイフェルたちに押されているみたいだ。
「……バリケードでも作っておきましょうか。メリーサ嬢の狙いはテノールです。意味があるとは思えませんが……ないよりマシでしょう。ミク、窓をお願いします。テノールは……窓から離れてじっとしていなさい。」
 ローディンはクローゼットを押して扉を塞ぐ。こういうことには慣れてないのか、なぜかクローゼットが後ろ向きになってしまっている。
「……」
 わたしは窓に力を集中させる。茶色いツタが生えてきて、窓を覆ってしまった。これで簡単には開かないだろう。
「ミク、ローディン、テノール!そこにいるの!?」
 部屋の外から声が聞こえる。レージェシアン女王様だ。ちょうど今バリケードを作ったところだ、と伝えると、それでいいわ、と返ってきた。
「そこから1歩も出ちゃだめよ!」
 そう言い残して、女王様は去っていった。
 
 どれくらい経っただろうか。わたしとテノールは身を寄せあってベッドの影に隠れていた。ローディンはクローゼットを押さえるように立っていた。
「……静かになりましたね」
「うん」
 少し声を抑えて話す。
「あなたたち、なんともなかった?」
 女王様の声。
「城に侵入してきたトイフェルたちは一掃したわ。」
 良かった。これでひとまず安心だ。
「しばらくは城の警備を強化して……」
「そこにいるんですのね」
 女王様とは違う、女の人の声がする。その瞬間、窓が大きな音を立てて割れた。窓を覆っていたツタはあっけなく切り裂かれ、中から金髪の女性が姿を現した。
「……あなたがメリーサなの?」
「ええ、その通りですわ。」
 メリーサはニッコリと微笑む。
テノールは絶対に渡さない!」
「渡す必要はありませんわ。ほぉら、こっちにいらっしゃい?」
「……」
 テノールは迷いもせずにメリーサの所へ歩いていこうとする。
テノール、行っちゃだめ!」
 テノールの手を握る。彼女はわたしの手を無理やり引きはがした。
「無駄ですわ。トイフェルたちは皆、わたくしたちの下僕。わたくしの言う事なら何でも聞きますのよ。」
 自分の身体が浮く。……ローディンが、わたしの身体を羽交い締めにしていた。
「ローディン!?なんで!?」
「言ったでしょ?トイフェルはわたくしたちの下僕だって。あなたの味方はだぁれもいませんのよ。……さあ、我が子よ。行きましょう……」
 メリーサはテノールを抱きしめる。そこで、彼女の動きが止まった。
「……え……?」
 見ると、メリーサのお腹が真っ赤に染まっていた。そして、テノールの手にはナイフが握られていた。
「……」
 ローディンはわたしを降ろし、わたしの前に立った。
「……」
 テノールはもう一度メリーサのお腹を刺して、彼女が付けている薔薇の髪飾りを取り、ちぎった。
「どう、して」
 テノールが最後の花びらをちぎると、メリーサはどこかに消えてしまった。
「……何が、どうなったの?メリーサは?」
「力が尽きて退却しただけです。油断はできませんが、とりあえず安心してよいと言えるでしょう。」
 ローディンはテノールの頭に手をかざす。すると、テノールは服とナイフを残してパッと消えてしまった。
「!?」
 何が起こったの?テノールはどこ?そう考えていると、ローディンはバリケードにしていたクローゼットを戻し、開けた。
「大丈夫でしたか?……貴方、よほど暴れたんですねぇ……」
 ローディンはクローゼットの中に手を突っ込んで、何かを……ほどいている?
「これでよし。……窮屈な思いをさせて申し訳ございませんでした、テノール。」
 クローゼットの中から、肌着姿のテノールが出てきた。