ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

『A』 第11話 質問

Neal
「おかえり。」
 家に帰ると、アルバが迎えてくれた。
「すまない、今日も帰って来ないと思って……。今からご飯作るから、待っててくれないか?」
「ああ、悪いな。」
 
 今日の夕飯は卵とチーズのパスタだった。「貧相なものですまない。今日はあまり買い物もしていなくて……」とアルバは申し訳なさそうに言っていたが、十分美味かったし腹いっぱい食えたので、オレにとっては大満足だ。
「ごちそうさま!美味しかったよ!」
 ディーも満足しているようだ。
「それなら良かった。」
 アルバは安心したように息を吐く。
「一応まだ食材はあるんだが、明日の朝ご飯のことも考えると、な……。」
「構わないさ。ところで……」
 居住区の事件についてアルバに訊こう。オレはアルバに「オレ達がいない間、何してたんだ?」と尋ねた。
「掃除して、洗濯して……」
「外には出なかったか?」
「外?ああ、少しだけ街を歩いたな。それがどうかしたのか?」
 これ以上何を言ってもはぐらかされてしまう気がする。それならば、ストレートに尋ねるしかない。
「お前さ。オレ達が森に調査しに行った時、居住区にいなかったか?」
「居住区に?」
「住民から話は聞いてるんだよ。黒い三つ編みで緑の目の女が居住区で暴れてたストレンを倒したってな。これ、お前のことだろ?」
「私にそんな力があるわけないだろう。それに、黒い三つ編みで緑の目の女性なんて私の他にも何人もいるだろう?」
「じゃあ明日、一緒に目撃者に会いに行くか?少なくとも、その女がお前かお前じゃないかは分かるはずだぜ。」
「……」
 アルバは諦めたように目を伏せる。
「参った。降参だよ。確かに私は居住区へ行き、ストレンを倒した。隠していたのはあなたたちに心配をかけたくなかったからだ。……すまなかった。」
「隠していた事については何も言わないさ。その代わり、質問には答えてもらうぞ。」
「分かった。……といっても、私もあの時の状況についてはよく分からないんだ。あなたの力になれたらいいのだが。」
 オレはストレンの特徴について、そして現場の状況について尋ねた。返ってきた答えはゼノンが目撃者たちから集めた情報とほぼ同じものだった。……そして、最後の質問。
「アルバ。お前、ストレンに腕を噛まれたって本当か?」
「腕?」
「そういう目撃情報があってな。それは本当か?」
「……」
 アルバは袖をまくって腕をオレに見せた。
「私が噛まれたように見えるか?」
 彼女の腕には傷痕ひとつ無かった。
「見えないな」
「だろう?」
 多分それはデマだな、とアルバは笑い飛ばした。彼女が噛まれた痕跡がない以上、そういうことなのだろう。
「聞きたいことはこれで全部か?」
「ああ。」
「すまないな、これだけしか話せなくて。……ああ、そうだ。風呂はどうする?入るんだったら沸かして来ないとな。」
「ああ、頼む。」
 アルバは部屋を出ていった。
 それから。オレ達は風呂に入り、それぞれ寝る支度をした。
 
 
D
 なんだか眠れなくて、部屋を出る。水でも飲もうかなと思って廊下を歩いていると……
「……うっ、……く、ふぅ……」
 ……部屋の中から苦しそうに呻く声が聞こえた。アルバの声だ。どうしたの、と彼女に尋ねる前に、少しだけドアを開けた。
 アルバは、板を敷いた机の上に左手を置いている。右手にはナイフが握られている。まるでまな板の上で自分の手を切ろうとしているみたいだ。
 ごとん、と何かを切り落としたみたいな音がする。その音の主は、間違いなくアルバの手だ。
「……まさか本当に……ああ、すごい」
 彼女はぼそりと呟く。ねえ、何がすごいの?君は何をしたの?怖くてたまらないけれど、僕はじっと目を凝らした。
 アルバは真っ赤になった左手を掲げて満足そうに眺めている。その手には、小指が無かった。
「!!」
 僕は驚いて後ずさり、その拍子に転んでしまった。
「?」
 部屋の中から足音が聞こえる。アルバが近付いてきてるんだ。
「ディーか?」
 アルバはドアを開けて顔だけ出した。
「あ、アルバ……」
「こんな遅くにどうしたんだ?怖い夢でも見たか?」
 アルバはいつものようにけらけら笑う。その笑い声が、今はどうしようもないくらい怖かった。
「眠れないならホットミルクでも作ろうか。」
「あ、アルバ、指、ゆびが、切れて、」
「指?」
 何ともないぞ、と彼女は右手を出す。真っ白な、傷1つない手だ。指もちゃんとある。
「ふふっ、寝ぼけてるんじゃないのか?」
 そうなのかもしれない。ただ寝ぼけてて、変な夢を見ちゃっただけなのかも。
「ごめんね、変なこと言っちゃって。ぼ、僕、もう寝るね。おやすみ!」
 僕は逃げるようにしてその場をあとにした。
 あれ?自分の部屋の前まで来たところで、僕は立ち止まる。アルバが見せてくれたのは「右手」だ。でも、彼女が実際に切っていたのは「左手」の指……。
「……」
 怖くて今夜は眠れなさそうだ。