ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 第64話 祝福の子

Reg
「祝福の子?」
 俺がそう聞き返すと、ヘラーノは頷いた。「祝福の子」。人間の両親の間に生まれたニュンフェ族の子どものことか。 
「ローディンの両親はどちらもトイフェルだったが、その間に生まれたアイツはニュンフェだったんだ。……アイツの目は父親と同じ赤色で、顔立ちは母親似なんだが、髪の色だけはどちらにも似ない金髪でなぁ。」
 そういえば聞いたことがある。トイフェル族の髪はほとんどが黒髪や赤毛で、ニュンフェ族の髪は金髪や銀髪、または俺のような青い髪なのだそうだ。
「人間と人間の間に生まれたニュンフェってのも珍しいが、トイフェルとトイフェルの間に生まれたニュンフェは恐らく、この世でアイツ一人だ。」
「へー!なんかカッコイイな!」
 ルギは身を乗り出し、それから!?とヘラーノに続きを促す。
「えっ?いや、だからよ。トイフェルの血が流れててもニュンフェなら大丈夫なんじゃないかって、そういうコトだよ。」
「えっ、それだけ?」
「それだけって……他に何を話せばいいんだよ。これ以上深い事は話さねぇからな。もっと聞きたいんだったらローディンに直接聞きな。信用できない奴にオレが話していい内容じゃねぇからなぁ。」
 確かに、俺達は行動を共にしたばかりだ。少し前まで俺達は敵だったのだ。信用できないのは仕方がない。
「構わない。正直、俺もお前やローディンの事は信用していないからな。」
「へぇ、やっぱり?」
 ヘラーノはニヤニヤ笑いながら俺を見る。……何となく気に入らない。
「お前達はロンドやテノールを危険に晒し、グレーディオに火を放った。信じられるわけがなかろう。それに、ローディンをメディスの城に残していったのは、アイツが手負いで動けないだろうと判断したからだ。あそこにはレージェもいる。何かしようとすればすぐに取り押さえられるだろうな。」
「アイツはそんなにヤワじゃねぇよ。でもまぁ、そんな状況で騒ぎを起こすほどバカじゃねぇのも確かだなぁ。そんな状況……ん?待てよ?今アイツはメディスの城にいるんだよな?それで、レージェシアン女王様やお前の仲間の女の子2人もそっちにいる……と。」
 ヘラーノは真剣な表情をして呟く。何か引っかかることでもあるのだろうか。
「あー、羨ましい……!」
「……」
 少しでも気になった俺が馬鹿だった。よし、メディスはまだまだ先だ。急ごう。
 
Roadin
 先日、テノールにある提案をした。私が魔法を使ってテノールの幻を作り、その間彼女にはどこかに隠れていてもらうというものだ。彼女は頷いた。しかし、彼女はそれに加えて私にとある注文をした。
「隠れる場所はローディンの部屋のクローゼット。その中に私を、動けないように縛ってから入れて。……それから」
 そう言ってテノールは自らの服を脱ぎ始めた。私の制止も聞かず肌着姿になった彼女は、私に服を突きつけて「私のニセモノに着せて。」と言った。彼女曰く、「私が着けてたものを着せたら、バレにくくなるでしょ。」とのことだ。彼女はメリーサを犬とでも思っていたのだろうか。
 ……まあ、実際メリーサはあの幻をテノールと思い込んでいたのだから結果オーライ、というべきか?
「ローディン、ありがとう」
 返した服を着ながら、彼女はぼそりと言う。彼女に背を向けていた私は腕を組む。
「お礼なんていいから早く着なさい。……はあ、まさか貴方から縛り方の指導を受けるとは思いませんでしたよ。なんです?『もっときつく縛って』だの『布を口に詰めて』だの。さすがの私でもちょっと戸惑いましたよ。」
「でも、楽しかったんでしょ。」
「ええ」
 私は口元を歪める。後ろから「ひどい人。」と彼女の呆れるような声が聞こえた。
「そもそも、なぜあんな事をする必要があったのです?」
「……思い出したの。牢獄と、光の樹を凍らせた時のこと。女の人の声が聞こえたの。『凍らせろ』って。それに従わなきゃって思って、私は……。」
 大きく深呼吸する音が聞こえる。彼女の表情は見えない。
「その声が、多分メリーサの声だったと思うの。だからね、私、思ったの。メリーサについてこいって言われたら、言われた通りにしちゃうんじゃないかって。もしかしてミクたちにひどいことをしちゃうんじゃないかって。」
 「そんなのいやだから、絶対に動けないようにしてほしかったの。」と彼女は呟いた。
「実際、縛っていたにも関わらず貴方は暴れまくったようですからね。メリーサ嬢のもとへ行こうと必死だったのでしょう。」
「うん。あの時、また女の人の声が聞こえたの。『こっちに来なさい』って。それを聞いて、行かなきゃ行かなきゃって思ったの。ローディンは、そんな声は聞かなかった?」
 聞こえはした。私の場合は「ミクを取り押さえろ」という声だった。しかし、聞こえるだけだった。従う気はしなかったが、メリーサを油断させるチャンスだと思い一応その通りにした。
「聞きましたが、従おうとは思いませんでしたね。むしろ、そんなもん知るかと言ってやりたかったですねぇ。」
「ローディンにはあんまり効かなかったのか?」
「生まれつきこういった術には耐性がありましてね。」
 それは恐らく、自分が「祝福の子」であるから……というのは黙っておこう。
「……ところで、メリーサ嬢がこちらに来たということは、レグ達はどうなったのでしょう。ひょっとして、もう倒されてしまったのかもしれませんね。」
「違う」
 強い否定の声。
「違う。きっと、メリーサはレグたちから逃げてきたの。レグもルギも、ちゃんと無事なの。」
 自分に言い聞かせるように言うテノール。……ヘラーノも無事なのだろうか。私もそうやって信じたいものだ。
「すぐに、みんなすぐに帰ってくるの。ここに来て、ただいまって言ってくれて、それで、」
 幼い少女をこれ以上不安にさせてはいけない。私は「そうですね、待ちましょう」とできるだけ優しい声で言った。