ソウゾウセカイ

Ivyと申します。ここでは主に小説を書いたりしています。コメントや★を付けていってくだされば嬉しいです。※小説には過激な内容が含まれることがあります。思いつきで書いているので、矛盾している点が多いです。そのため、過去の記事を書き換えることがあります。ご了承ください。

冒険者達の記録書 第70話 男として

Reg
「よしっ、できた!」
 ルギは伸びをする。どうやら写本が済んだようだ。紙を見ると文字がぎっしりと書かれていた。……本に書かれていたものとそっくりな、ミミズの這ったような文字だ。
「おまたせ!これだけあればジューブンだぜ!」
 ルギは紙をまとめて抱える。
「なぁルギ、その本は何が書いてあったんだ?」
「これ?さっきメリーサを邪魔するのにピッタリな魔法があるって言っただろ?ここにはその詳しい手順が書いてあったんだ!」
 これを書いたオレ、ナイス!とルギは笑う。俺もつられて笑った、が、ふと先ほど聞いた声が気になって俺は顔を伏せた。
「レグ?さっきからどうしたのか?」
 テノールは俺をじっと見る。それにつられてミクとルギも視線を俺に向けた。
「……少し気になる事があってな。さっきの水晶玉……あれに触った時、変な声がしたんだ。……『赤い目は殺される』って。」
「!!」
 ミクはテノールを見る。ルギも紙の束を抱えたまま固まっていた。
「あ、赤い目ってテノールのことじゃんか!」
「館長さん、言ってたよね。あれは占いに使われてたって。だとしたらその声って……もしかして、予言だったりして……。」
 ミクがそう言った瞬間、その場の空気が凍りついた。
「ご、ごめん。不吉だったよね。」
「……私、殺されるのか?」
 彼女はじっと俺を見る。俺は彼女の頭を撫でた。
「大丈夫だ。」
 そう言ってはいるが、彼女の、そして俺の不安は晴れない。暗い気分のまま俺達は帰った。
 
 ここは城の中。レージェとローディン、ヘラーノも集まり、ルギの話を聞いていた。
「……それでな!メリーサを邪魔する魔法なんだけど、それには2つの物が必要らしいんだ!1つ目は『ルーナ・カエルレウム』……『青い月』って呼ばれていた石。アレンの弟子が生み出した人工の山にしかない鉱物で、良質な魔法の素材として高額で取り引きされていた……らしい。2つ目は『星の杖』。メディステール王家に献上された最高級の魔法杖だって。レージェ、何か知らない?」
 ルギに呼び捨てされた事にも動じず、レージェは手を頬に当てる。
「宝物庫にあるかもしれない。探しておくわ。」
「問題は『青い月』だね。どんなものなんだろう?」
 ミクとルギは揃ってうーんと唸って考える。が、結論は出ない。
「また明日考えましょう。」
 レージェの声で、その場はお開きとなった。
 
 部屋には俺とヘラーノだけが残った。俺も部屋を出ようとした時、「レグ」とヘラーノに名前を呼ばれた。
「お前、『青い月』の正体に気付いているんじゃねぇの?」
「ああ、断言は出来ないが……コレだろう?」
 俺は剣を抜く。青い剣。この素材となっている石は、故郷ギーバの外れにある洞窟でしか採れない青い石だ。
「『青い月』。恐らく、その石が青いことで呼ばれた名だろう。我が家には『月の宝玉』という、同じ『月』という言葉が入った家宝がある。関係ないことは無いだろう。」
 思えば、この宝玉が、俺が行動を起こすきっかけだったのだ。2年間洞窟にこもっていた俺はこれの異変に気付いてそこから出た。それからルギやミク、そしてテノールと出会い……そして今、敵だったはずのローディンやヘラーノとも仲間として共に歩もうとしている。
「何ニヤニヤしてんだ?カワイイ女の子の顔でも思い浮かべたのかぁ?」
「お前と一緒にするな!」
 そう言って抗議したが、ヘラーノに肩を叩かれた。
「オレにはちゃーんと分かってるぜぇ。お前も男だもんなぁ。ちょっと今夜飲みに行くか?オレ、キレイな姉ちゃんがいる店知ってんだよ。」
「待て、絶対分かっていないだろう。俺は……」
「そうか。お前にはあのちっこいお嬢ちゃんがいるもんなぁ。互いが互いを想いあってるなんて羨ましいねぇ、アツアツラブラブカップルだねぇ。」

 「ちっこいお嬢ちゃん」がテノールを示していることはすぐに分かった。
「人の話を聞け!だいたい、俺とアイツはそんな関係ではない!」
 「いやいやいや」とヘラーノは首を振る。
「どう見てもカップルだろ。あの娘だってお前の事を信頼してるみたいだし。あの娘、オレみたいな大男の前だとどんな態度とるか知ってるか?すっげえ震えながら『こっち来るな!』って子猫みたいに威嚇するんだ。」
「お前、またテノールを怖がらせるような真似を……!」
 俺はヘラーノを睨む。まあ待て待てとヘラーノは手を振る。
「オレはただ近付いただけだよ。ローディンやルギは大丈夫そうなのに何でオレだけ怖がられるかなぁ……いや、そうじゃなくて……えーっとな。お前はあの娘に超信頼されてるって言いたかったんだ。お前だってガタイがいいし、オレより目つきも悪い。だけどあの娘、お前にデレデレだろ?」
「それは……俺が、家族の代わりに甘えられる存在となっているからだろう。」
 彼女の甘え方は、とても異性に対するようなものではない。子供が親にするような甘え方だ。
「それって男として見られてないってコトかぁ?可哀想に。」
「いや、それでいい。今のあいつには、遠慮なく甘えられる存在が必要だ。」
 俺達と出会うまで、テノールは他人に愛情を注がれた事はなかった。頼る者がいない中、彼女が受けた仕打ちはあまりにも惨すぎた。
「誰かがテノールを癒してやらないと、彼女は完全に狂ってしまう。だから……」
「お前がお嬢ちゃんを癒すってワケか。」
「そうだ。何があってもアイツを守り、愛情を注ぎ続ける。」
「素晴らしい騎士様だねぇ。ずっとか弱いお嬢様を守り続けるってか。」
 そこには皮肉も込められているのに気付いたが、あえて頷いた。
「ああ。俺はずっとテノールを守る。それで、アイツが強くなったら……今度は俺が『男』として認めてもらうんだ。」
「へぇ」
 ヘラーノの口の端が吊り上がる。
「なかなか良い理想持ってんじゃねぇか。お前の事は気に入らねぇが、1人の男としてこりゃあ応援せずにはいられねぇ。頑張りな。」
 彼は俺の背中を叩く。痛いじゃないかと言い終えないうちに、彼は部屋を出ていってしまった。